#名刺代わりの小説10冊
幼年期の終わり/クラーク
あなたの人生の物語/テッド・チャン
向日葵の咲かない夏/道尾秀介
黄金風景(きりぎりす)/太宰治
ジェノサイド/高野和明
魔王・砂漠/伊坂幸太郎
恋文の技術/森見登美彦
掟の門(カフカ短編集)/カフカ
推定少女/桜庭一樹
変種第二号もおもろいよ!
— とうや(TOUYA)🐶 (@senzilife) 2020年5月13日
どうもお久しぶりです。(2回目)
前回に引き続き、私のTwitterの固定ツイートにある
#名刺代わりの小説10冊の紹介をさせていただければと存じます。
あんまりネタバレを含んでも仕方ないので、どちらかといったら超個人的な僕の思い出を絡めてのお話です。深い考察とかは出来ませんのであしからず笑
それではスタートです。
▼前編はこちら
もくじ
魔王 伊坂幸太郎
【あらすじ】
『魔王』(伊坂 幸太郎):講談社文庫|講談社BOOK倶楽部 より
魔王とは何者なのか?魔王はどこにいるのか?
世の中の流れに立ち向かおうとした兄弟の物語。
会社員の安藤は弟の潤也と2人で暮らしていた。自分が念じれば、それを相手が必ず口に出すことに偶然気がついた安藤は、その能力を携えて、1人の男に近づいていった。5年後の潤也の姿を描いた「呼吸」とともに綴られる、何気ない日常生活に流されることの危うさ。新たなる小説の可能性を追求した物語。
一番はじめに読んだ伊坂作品です。
タイトルからの強いインパクトを受け購入しました。当時の僕の本棚は
「魔王」「ジェノサイド」「ハサミ男」「虐殺器官」「家畜人間ヤプー」と凄いタイトルのものばかりだったので
当時付き合ってたいた彼女にはだいぶ距離を置かれていました。
そんな中二病真っ盛りな僕がタイトル買いしてしまった本作ではありますが、内容はとてもエンタメ要素に特化していて、非常に読みやすく初めて時間を忘れ夢中に読めた本でした。
伊坂作品あるあるだと思うのですが、日常の中に非日常を溶け込ませるのが本当に上手で、この小説を基に脚本を書いたら、きっと書き手によって「社会派な実写映画化」でも「超能力バトル漫画」でも通じると思います。
なんの変哲もないサラリーマンがある日突然、自分が念じた言葉を目の前の相手に話させる能力に目覚めてしまうところから物語が始まります。
主人公は初め、この能力を小さないたずらだったり、なにか人助けが出来ないかと考えましたが、よくある漫画の能力者に比べたら地味過ぎると次第に飽き始めていきますが、とあるきっかけを受け日本の政治システムに疑問をいだき
「この能力を使って街頭演説してる首相に下ネタでも言わせて辞任に追い込んだら、少しでもこの国を変えられるんじゃないか」と画策し始めます。
私はこの小説を読んで思ったのが、政治家が決してクリーンな理由のみで法案を提出するだけではないという点ですね。いきなり法律を変えると国民に騒がれてしまうので、少しずつ 少しずつ足掛かりを作るように細かい法案の変更をしていく、そんな描写が当時の(もしくは現在の)与党の動きと妙にリンクしており、この小説はただ、面白いだけじゃないぞという実感がありました。
ストーリのスピード感も秀逸で、流れるようにオチに持っていく感じが読みやすいです。
ちなみに続編も出ており、「隠蔽に次ぐ隠蔽」「一個人が国家に勝つなんて絶対に無理」という少しディストピアめいた内容となっております。
▼魔王の続編
砂漠 伊坂幸太郎
【あらすじ】
入学した大学で出会った5人の男女。ボウリング、合コン、麻雀、通り魔犯との遭遇、捨てられた犬の救出、超能力対決……。共に経験した出来事や事件が、互いの絆を深め、それぞれを成長させてゆく。自らの未熟さに悩み、過剰さを持て余し、それでも何かを求めて手探りで先へ進もうとする青春時代。二度とない季節の光と闇をパンクロックのビートにのせて描く、爽快感溢れる長編小説。伊坂幸太郎 『砂漠』 | 新潮社より
※実は以前Twitterでもこの砂漠に関してはツイートしてるくらい思いれがある。
学生の頃クラスメイトに「小説読んでなんの意味があんの?」と皮肉混じりで言われたので「これ読んでる振りしてるだけでな、実は全然読んでないの。カッコつけ…笑」
— とうや🐶 (@senzilife) 2021年2月3日
って冗談言ったら「マジかよ笑」って仲良くなった友人がいたんたんだけど。卒業間近で「なんでもいいから1冊貸せよ」と言われ→
高校の頃の仲の良かったメンバーでさんざん布教してた作品です。
ちょっと「四畳半神話大系」みがある作品でこれに同著作の「アヒルと鴨のコインロッカー」を足したようなお話となっています。
「春」「夏」「秋」「冬」そして「春」の5部構成となっており、主人公が入学した春からスタートします。いい感じに叙述トリックにもなっており、いろいろなエンタメ要素がふんだんに組み込まれた作品です。登場人物も5人と多いのですが、それぞれに個性豊かなメンバーとなっており、読みやすく一緒になって遊びたい気持ちにさせてくれます。
また、日常に非日常を溶け込ませる伊坂作品のファンタジー要素も一部入っており、一つ一つのお話が独立して読むのが楽しいものとなっています。
ただ、「青春」は明るいだけではなく暗い一面も持ち合わせているのが常です、ただ「人生の夏休み」を送ってきただけの彼らにも「辛い現実(砂漠)」の中を突き進まなければいけない日が次第にやってきます。そんな時に自分を支えてくれるのは苦楽を共にした大切な仲間達との大切な思い出だと教えてくれる作品です。
当時の僕たちも高校を卒業するにあたって未知の大学生活というある種の砂漠に突入する時に読んだ本でした。
僕はこの本と砂漠を読んで培った友人達との思い出を胸に抱えながら、大学を入学をしました。
■関連書籍
恋文 の技術 森見登美彦
【あらすじ】
京都の大学から、遠方の実験所に送られた男子大学院生が、友人知人に手紙を書きまくる。でも本当に気持ちを伝えたい人には、思うような手紙が書けなくて――。。恋文の技術|一般書|小説・文芸|本を探す|ポプラ社より
普通、森見登美彦といったら「四畳半神話大系」ですが当時はまだ読んでなかったんですよ!!
森見登美彦の作品で他に好きなのは絵本みたいな暖かさの中にちょっぴりほろ苦いストーリの「ペンギン・ハイウェイ」などがありますが、「恋文の技術」に関しては森見登美彦のストーリの構成力や表現方法の幅の広さなどにも度肝を抜かれた作品です。
まず、小説のストーリが主人公が書いた手紙の内容のみで進んでいくというユニークな点にあります。
- ③自身が以前に面倒を見ていた小学生の男の子に対しては優しい表現や漢字などをなるべく省いた理想の自分像をモチーフにした手紙(ここが全然事実に即してなくてメッチャクチャ面白いです)
- ④そして、作者自身にも、尊敬が出来ないなどの内容の手紙
- ⑤好きな女性への手紙
- ⑥一緒に森見登美彦から版権を奪おうぜなどの内容を妹へ宛てた手紙
などなど様々な手紙を主人公が送ることによって、ストーリが展開していきます。
手紙の返信の内容は明かされないのですが、読者視点からは各登場人物へ宛てた手紙を読むことが出来るため、ストーリの輪郭が分かるというものになっています。
四畳半神話大系と違った面白い所は手紙のやり取りのみでのストーリが進行していきますので非常にシンプルな内容となっており、コメディに振り切った作品です。
ノスタルジーはややかけますが森見登美彦さんの面白いところをシンプルに読みたいっていう人にはだいぶオススメです。
■関連書籍
掟 の門(カフカ短編集) カフカ
【あらすじ】
実存主義,ユダヤ教,精神分析,――.カフカは様々な視点から論じられてきた.だが,意味を求めて解釈を急ぐ前に作品そのものに目を戻してみよう.難解とされるカフカの文学は何よりもまず,たぐい稀な想像力が生んだ読んで楽しい「現代のお伽噺」なのだ.語りの面白さを十二分に引きだした訳文でおくる短篇集.二十篇を収録.カフカ短篇集 - 岩波書店より
カフカの短編集の中でも一番に好きなのは「掟の門」という短編です。
内容を簡単に紹介しますと巨大な門を巨人の門番が守っている描写から始まり、どうしても門を通りたい主人公が巨人に「門を開けてください、通して下さい!」と懇願し続けるのです。
巨人はダメだと一蹴しますが、男は諦めず門の前で懇願し続けます、そして何日・何年・何十年と時が過ぎていきとうとう男は白骨となってしまいました。
それを見た巨人が言います。
この門は鍵なんかかかっておらずいつでも開けられたのに
このお話から人生にとって行動力の大切さや、勇気とチャレンジがどれだけ大事かがわかります。
また、この男が本当に立ち向かわないといけなかったのは門番でも巨大な門でもなく、門の向こう側にある「今は見えないその向こう側の世界」です、いかに早く行動をするか、その大切さまでも教えてくれるそんな作品でした。
推定少女 桜庭一樹
【あらすじ】
直木賞作家の、初期傑作青春ノヴェル
あんまりがんばらずに、生きていきたいなぁ、と思っていた巣籠カナと、自称「宇宙人」の少女・白雪の逃避行がはじまった――桜庭一樹ブレイク前夜の傑作、幻のエンディング3パターンもすべて収録!!推定少女 桜庭 一樹:文庫 | KADOKAWAより
これは僕が大学生自体の頃、一緒に住んでいた、キャバ嬢の家に沢山あった本です。
実家から逃げるよに引っ越して来て、まだ家具もない彼女の家には本棚もなく、しかし沢山の本が床に並べられていました。
そんな中、手にとって読んだ小説がこれです、内容は児童虐待から女の子が逃げ続ける作品で、途中で知り合った自称宇宙人の不思議系の友達と一緒にこの大人が支配している殺伐とした世界を生き抜く内容となっています。
この宇宙人の子が最後まで宇宙人なのか否かはっきりとしない描写であったり、早く大人になりたい主人公達の心境も深く描かれています。
「大人になれるのは生き残った子供だけなんだよ」
そんな当たり前ですが、悲しい発言をしてしまう少女達の儚さや、好きな友達とずっと仲良く暮らしていきたい、でも出来ない。それは私が子供だから。はやく自由になりたい。そんな思いが詰まっている作品です。
今思えば、僕は彼女とこの小説の主人公の少女を重ねていたのかもしれません。また、彼女もこれは自分だとこの本を読んでいたのかもしれません
ジョージ・オーウェルの「1984年」に描かれていた「本当に偉大な本は自分が書いて欲しいと思えるものが載っている本だ」みたいなセリフがありましたが、まさしく「これは私だ」となれる本が一体いくつこの世の中にあるのでしょうか。
もしそんな本に出会えたのであれば、その本こそ一生モノの経験と言えるのかもしれません。
そんな本に僕も会ってみたいです。
■推定少女に近い作品
さいごに
長かったです。こんな簡単にまとめるだけなのにめちゃくちゃ時間がかかっちゃいました。
Kindle派の人もいると思いますが、本棚を眺めてみると、当時どんな気持ちでこの本を読んでいたのか改めて思い出すことが出来、なんとも言えない感覚になれるので僕のKindleデビューはまだ先だと思います。
Twitterの方では日々読了作品をアップロードしておりますので、そちらも確認をおねがいします。
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